東 志津(あずま・しづ)
大学卒業後、映像の世界へ。企業のPR映画やCM、テレビ番組の製作などに携わる。取材で知り合った中国残留婦人との出会いをきっかけに2007年、最初の長編ドキュメンタリー映画「花の夢 ある中国残留婦人」を発表。その後、2009年に文化庁新進芸術家海外研究制度にて渡仏。フランス国立フィルムセンター(アーカイブ部門)を研修先に1年間、パリに滞在。戦争の記憶をどのように受け継ぎ、映像に残していくかを模索する。2014年、2作目となる長編ドキュメンタリー映画「美しいひと」を製作。広島・長崎で被爆した日本、韓国、オランダの原爆被害者たちの最晩年を描いた。著書に、『「中国残留婦人」を知っていますか』(岩波ジュニア新書)。
カメラと三脚を抱えて、見知らぬ人たちの中に飛び込み、
長い人生のほんの一瞬を、撮影という行為を通して共に生きる。
何年もかけて仕上げに取り組み、
気がつけば、映画づくりそのものが、「私」という人間を育て、
仕上げてくれていたのだということに気付かされます。
理不尽な形で命を奪われた人たちのことを絶対に忘れない。
弱くて力のない存在を大切に思う。
それが、私の映画づくりの起点です。
映画館の暗闇で、一心にスクリーンをみつめ、耳を澄まし、
終われば、また、それぞれの人生に戻っていく。
閉じていた扉がすっと開いて、ふっと気持ちのいい風が吹き抜けるような、
そんな映画を作りたい。
世の中を大きく動かす力も、知恵も、私にはありません。
だから、せめて、映画を観てくれる一人一人の心に、小さな明かりが灯るような、
そんな作品をつくり続けたいと思います。
私の映画づくりと上映を手助けしてくれる、大切な仲間たちと共に。
監督 東 志津